大学生のとき、薫を平日の真昼間から代官山に連れ出してクレープを食べながらデートした。完全に恋愛初心者だった僕らは、そんなありきたりなデートでも楽しかった。テラスに向かい合わせで座って、恋人同士の内緒話を楽しんだ。芝公園の1つのブランコに2人で座ってはじめてのキスをした。それからはや4年。薫が隣にいることが当たり前のように感じられるようになってきた今でも、彼女の一挙一動がぼくをどきどきさせる。それは昔よく感じていた別れの兆候を予感する恐れではなく、恋人としっかり意識できる相手が行う動作に女を感じてしまうからだろう。